第一回AJPCの大会レポートです。
第1回AJPC決勝トーナメントの幕開け
2007年6月2日、東京・大田区、セガ社一号館において、第1回全日本ポーカー選手権(AJPC)、決勝トーナメントの幕があがった。
世界的にブームとなっている「テキサス・ホールデム」の波が上陸し、ついに日本でも史上最大規模の大会が開催されることになった。東京、大阪の各予選から勝ち上がったプレイヤー達、バックギャモン、囲碁、麻雀などの国内古来の各ゲーム界の実力者が集結し総勢71名で行われ、この大会によって日本における最強のポーカープレイヤーが誕生する。
このトーナメントの勝者には毎年ラスベガスで開催されるWSOP(World Series of Poker)メインイベントの参加権(US$10,000)に加え、渡航費・滞在費が与えられる。
※WSOP(ワールド・シリーズ・オブ・ポーカー)
毎年ラスベガスで開催される世界最大のポーカーイベント。2006年のメインイベントには約8000人が参加し、優勝賞金は15億円と巨額であった。あらゆる競技・ゲームの中で優勝賞金・参加人数ともに世界最大のトーナメント。
ファイナルテーブルをめざす71名の死闘
決勝トーナメント第一日、この日は71名から6名の入賞決定者まで絞られる。正午にゲーム開始。昨年のラスベガスで行われた世界大会、WSOPメインイベントと同じ1万点持ちの50-100のブラインドでスタート。会場にはプレイヤーの緊張と気迫が会場内を張り詰めた空気に支配させ、それを観客や関係者に神妙に見守れながら進められた。
特に大きくぶつかる事もなく静かに40分が経過した第1ラウンドであったが、第2ラウンドに入ると仕掛け始めるプレイヤーが少しずつ現れ、あちこちのテーブルでぶつかり、オールインの声が聞こえるようになり、一人二人と脱落者がではじめる。第3、第4ラウンドとさらにオールインの声も多く聞こえるようになり、日本バックギャモン協会の下平代表や日本棋院の武宮九段と招待選手達も続々と脱落し始める。
午後4時の4ラウンド終了時にはプレイヤーの数も約半数の35名前後まで減り、持ち点数も残り僅かな者、まわりのチップを掻き集めてチップを摩天楼のように幾つも作るものと、格差が出始めるようになった。
午後5時をまわった所で2テーブルに整理され、この時点でのチップリーダーがaberiri(東京予選Bトップ通過)と2位が金子真一郎(日本バックギャモン協会盤聖)。そしてこの2人が同じテーブルになり、早々に真っ向からぶつかることになる。
最初にオールインを仕掛けた金子、このオールインをabeririが当然のように受ける。
勝負の結果は金子の勝利!あえなく敗れたabeririは完全にショートスタックとなり、間もなく敗退。これにより金子は残りプレイヤーの総チップ量の約1/3を確保してほぼ独走状態を確立してファイナルテーブルへ進んだ。
ファイナリスト決定
正午に開始したこの激しい攻防が8時間半続き、最後7人目が敗退して6名のファイナリストが決定した。
勇姿6名が翌日の選手権ファイナルステージへと進んだ。
激しい攻防を勝ち抜いた6名のプレイヤーは一夜明けた6月3日。TDのアナウンスで 1人1人紹介されながら登場!この6名の中で誰がラスベガスWSOPメインイベントの切符を手にするか!
楕円形のテーブルをぐるっと囲む大観衆が見守る中ファイナルテーブルのゲームが開始された。
1位 | 金子 真一郎 | 433,000 |
---|---|---|
2位 | 塩野 英成 | 87,000 |
3位 | 丸木 健 | 75,000 |
4位 | 野村 幸宏 | 73,000 |
5位 | 石田 渉 | 22,000 |
6位 | 坂本 邦彦 | 20,000 |
ファイナル開始ブラインドは 8,000 – 16,000 ante 1000 。
金子がダントツの状態でゲーム開始。残り5名のプレイヤーがどのように戦うのか。
誰の目にも金子の優勝がほぼ確定に見えたファイナル戦であった。
第1ハンド、6名に2枚のカードが配られてスモールブラインドが最下位の坂本、ビックブラインドが第2位の塩野。
アクションは石田、丸木、の順。それぞれ長考しながら石田、丸木がフォールド。
野村が16,000点をコールすると、 次のポジションのチップリーダー・金子がレイズ40,000点。
それを見て坂本、手持ちすべてのチップを押し出してオールイン(make 20,000点)。
塩野も長考に長考してオールイン(87,000点)。
最後に既にコールして16,000点を出している野村は仕方なくオールインして73,000点を押し出す。
この1ハンド目から勃発した4つ巴戦に勝利を挙げたのは最下位だった坂本。
これで坂本は80,000点以上に復活する。
2番目のハンドを持っていた塩野が残りのサイドポットを回収してほぼダブルアップに成功。はここで敗退となり残り5人となった。
その後、チップショートだった石田、丸木がそれぞれ敗退して残り3人になる。
最後の3人の攻防
ラウンド終了間際、金子が10万点のレイズに坂本は自身満々にレイズオールイン205,000点。金子が88ポケットペアを見せると、坂本はどうだと言わんばかりに99ポケットペアをテーブルへ叩きつける。
フロップが開くと3枚の中に9!そのまま9スリーカードを作った坂本の勝利。
この一戦で坂本が402,000 点、金子が228,000点と1位が逆転。二人を追いかけるのが 3位の塩野80,000点でR12が終了。
休憩を挟んでR13が開始。ブラインド10,000 – 20,000 アンティ 2,000。
ブラインドが誰にとっても重圧と感じるような存在となり、1ハンドごとのアクションの重みが増していく。
ゲームごとにスチールレイズにフォールドが繰り返され、3人ともぶつからずに静かにゲームがすすんでいくが、ラウンド開始後20分頃より塩野と金子が激しくぶつかり合う。
塩野オールインに 金子コール。
塩野の開くハンドはQ10。一方金子は88ポケットペア。
リバーに10が落ちて塩野の勝利。塩野が金子のチップを削って20万点まで追い上げる。
そして再度塩野オールイン、金子コール。 塩野はAK、金子はA7の2スペード。
フロップに2枚のスペードが落ちて 金子はフラッシュドロー。しかし勝利の女神は金子に微笑まず。ターン、リバーとスペードは落ちずに塩野の勝利で37万点まで増やす。
その後小さなぶつかり合いが少しずつ続いた後に今度は坂本と塩野がぶつかる。
塩野、坂本の間でフロップ、ターンとレイズ、コールが続き、少しずつポットが膨らんだ後にリバーが開いて坂本がオールイン。塩野がこのオールインを受けて長考、長考の末「コール!」
坂本が開いたハンドはK K。塩野は10 10 。
ボードにはKも10もなく、塩野が敗退して3位となった。
優勝をかけた最後のヘッズアップ - 奇跡のハートのエースー
とうとう残りは二人、坂本と金子のみとなった。坂本450,000 点、金子260,000点。
2人となってからもスチール合戦が何度となく繰り広げられた後、いつの間にか二人のチップはほぼ互角に戻っていた。
途中、勝利を確信して金子がラスベガス行きの宣言をするかのように自分のパスポートを頭上に掲げて観客へアピールすると、坂本も負けずと自身のパスポートを鞄から取り出しテーブルにパンッ!と叩きつける!
会場はこの緊迫した場面における二人のパフォーマンスに大歓声と拍手で湧き上がった。
そんなやり取りのあとレイズ、リレイズでポット678,000点まで膨らんで開いたフロップは、



そのフロップを見て金子は声高らかに 「オールイン!」残りの15,000点を押し出す。
その様子を凝視したままの坂本。手持ちチップも17,000点余り。コールして残り約2,000点となってしまう。
このゲームで勝負がきまる…
しばらく考えた後、坂本は立ち上がりながら「山タン※を信じよう!」と言い放ち、すべてのチップを押し出してオールイン!
※(注)山タン・・・ファイナルテーブルを担当したチーフディーラー・山本宏樹。
金子はカードを開き
坂本は顔を硬直させたままカードを開く
金子が勝利確定かと思わせるのKのワンペア。坂本はガッツショットストレートドローのAハイ。
2がでればストレート、もしくは Aが出ればAワンペア。坂本が勝つためには7アウツ。勝率約28%である。
チーフディーラーの山本が静かにバーンカードを一枚噛ませてターンを開く。

そして最後の一枚。リバーカードは

リバーカード「A」で金子のKワンペアを坂本がAワンペアで捲くり大逆転!
この最後にハートのエースがテーブルを見守る会場中の大観衆に衝撃と感激を与え、それをすざまじい歓声で沸かせ、すばらしい感動の渦の中で第1回AJPCの最強の男が誕生した。